春の大和屋料理

日本料理は、四季の風情を生かし目で楽しむ豊かな感性をご覧に入れる料理です。旬の食材を味わいながら、心細やかなおもてなしの手仕事が豊かに薫ります。四季の国の食文化の一端をご紹介いたしましょう。

季節の華やぎ料理

先付「白魚 梅ヶ香」

尼宗哲溜布張菱銘々皿

先付「白魚 梅ヶ香」

春の賑わい、ひな祭りにふさわしく菱型の皿に盛りつけた先付です。
早春の味覚、白魚を20分ほど塩に漬けにしたあと、形をととのえ10分ほど蒸す。
梅ヶ香は、大根おろしをさらし布に包んでもみ洗いし味抜きをしたものに、裏ごしした梅肉を和えたものです。
添えてあるワカメも八方だしに浸けて味を含ませています。

酢の物「身巻き海老」

黒塗内朱二重蔓蒔絵煮物椀

酢の物「身巻き海老」

ひな祭りにふさわしい仁清写焼き蛤向付けの器に盛った、美しい酢の物です。
のし串を打った車海老をさっと湯がき、殻をはずして八方だしに浸け、味を含ませたワカメで巻きつけ雲丹酢をかける。
雲丹酢は、練りウニ・卵黄・酢・酒・味醂・醤油・砂糖・葛溶きを混ぜ合わせたものを2時間ほど湯煎し、軽く固め羽二重ごししたもの。
菜種の緑と山の旬蕨を添えて、彩りもご馳走にした日本料理らしい料理人の仕事です。

造り「鯛 車海老」

永楽妙全作紫交趾菊花向付

造り「鯛 車海老」

早春の土筆を添えた、季節が香る造りです。宮廷の姿に似せた雛人形にちなみ、天皇家の紋章菊になぞらえた菊花の向付けの器に盛りました。
鯛はへぎ切りにする。車海老は頭をとり、熱湯に7~10秒くぐらせ氷水に落として霜降りにし、殻を取る。
どちらも柔らかい色合いが早春の淡いひかりを思わせ、清々しく仕上がっています。

焚合せ「新若竹土佐煮」

魯山人作絵御本手

焚合せ「新若竹土佐煮」

4月上旬に京都でとれる、皮が白っぽい薄黄金色で、穂先が柔らかく透明感のある“白子”と呼ばれるえぐ味のない新若竹を直炊きした、春ならではの一品です。
柔らかく炊き上げて一度取り出し、お出しする直前にあたためた若竹は、最後にだしを捨て、なべ底に残っただしがなくなる直前に糸鰹を入れ、ふわっとからませました。青竹の取り箸も風情です。

焼物「油目揚げみぞれ焼き」

魯山人作銀彩蟹絵平鉢

焼物「油目揚げみぞれ焼き」

関西では油目と呼ばれる鮎魚女(あいなめ)を油で揚げ、掛け焼きにしました。
3枚におろし骨切りしたあぶら目を素揚げにし、大根おろしに味醂と醤油で味を付け、ちぎり木の芽を散らせたものを掛け焼きにました。
ふんわりした中にしっかりとした食感の味わえる、手の込んだ一品です。

ばら寿司

初瀬川柳庵製黒塗網絵手桶

ばら寿司

早春の野山の景色を盛り込んだ鮮やかなご飯が、手桶の蓋を取るとぱっと目に飛び込み、食欲をそそります。
あっさり目のすし飯には、甘めに炊き上げ細かく切った干瓢・レンコン・高野豆腐・色よく仕上げたフキ・甘辛く炊いたドンコ椎茸・酢洗いしたジャコを混ぜ合わせています。
すし飯の上には錦糸玉子・蕨・菜種・竹の子・車海老・穴子・花びら生姜・木の芽が彩りよく散らされ、春の華やぎを感じさせます。

画像の出典 : 柴田書店 『大和屋歳時』 より